縮んだ着物を買い取ってもらうことにしました。

それは数年前のことでした。

調理師だった母と割烹料理屋を始めました。

私は着物が大好きだったので、着物を着て仕事をしていました。

何よりも大好きな着物を着ていられるというのが、幸せで幸せで仕方がありませんでした。

そんなある日、すごく寒気がし、ベッドから起き上がると足元が何処にあるのか分からないくらいフワフワとしていました。

すぐに熱があると思い、体温計をワキに挟み、体温計の冷たさを感じながら、終了の電子音が聞こえるのを待ちました。

ピピと電子音が聞こえる中、表示されている数字を見ました。

「え?40・3度!」

数字を見間違えたのかと思い、目を大きく見開いて再確認しましたが、どんなに目を大きくしても数字は変わることがありませんでした。

でも、あいにくその日は予約が入っており、母と私の二人でお店をまかなっていた為、休むこともできませんでした。

私は母には熱があることを内緒にしておこうと決心しました。

二人でお店に出勤し、仕込みを始めました。

私は床が何処にあるのか分からない感覚のまま、元気を装い、シャキシャキと体にムチを打ちながら歩きました。

正直なところ、私の熱に気付かない母にも不満心を持っていましたが、40・3度の熱を隠せる私は大した役者だと、大根を片手に自分に言いました。

「あなたは大根役者ではないよ。」と。

もうすぐ開店時間となるころ、一本の電話が鳴りました。

出前の依頼でした。

ザー!

急に雨が降り出しました。

母は予約の料理の用意で忙しかったため、私が出前に行くことになりました。

もう体力も限界で、寒気もはんぱなくしてきていましたが、雨の中、雨に濡れないように包んだお料理を片手に、傘をさし、着物を着てお客様のご自宅まで向かいました。

雨と表現するより、土砂降りな雨という表現が似合う雨の中でした。

風も吹き、傘の意味がないくらいに全身びしょ濡れになりました。

傘で唯一守れたのは、お客様にお届けするお料理でした。

無事届けることができ安堵し、店に帰りました。

もう倒れそうでしたが、笑顔を見せました。

「おかえりー、雨の中大変だったね。で、どうして着物がミニ丈になってるの?」と、母が言いました。

私は着物の下半分を見下ろしました。

「ち、縮んでるー!」

正絹だった着物が、雨に濡れ、縮んでしまったのでした。

私はその場に倒れてしまいました。

熱のせいか、着物が縮んだショックかは不明です。それで、結局縮んだ着物はうれるかどうかわかりませんでしたが、とりあえず着物買取業者に売ることにしました。

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